柿渋紙の作り方

どうして細かな細工ができるのでしょうか?

どうして水に濡れても丈夫なのでしょうか?

 柿渋紙(地紙とも言います)は、細かな細工にたえ、水にも強い魔法の紙です。いくら彫り師の腕がよくても、渋紙がなければその技を発揮することは出来ません。渋紙だからこそ、0.5mmの線でも残せるのです。このページでは、その秘密を探ってみましょう。

 板の上に2〜4枚(普通は3枚)の和紙を柿渋(豆柿という種類の柿の渋)で張り付けます。このとき和紙の繊維を縦横縦となるように置いていきます。この3枚の和紙が一単位となって1枚の柿渋紙が出来ます。

3日程柿渋につけた後、天日にあてて乾わかします。

 

 (むろ)と呼ばれる薫煙室の中で数日薫煙します。(室枯らしと呼びます。)これによって水分を完全に飛ばします。

 再び、柿渋をつけ、天日干し、室枯らしと繰り返します。柿渋紙が出来るまでに約1ヶ月かかります。型彫り用の紙として使用するには、さらに1〜2年寝かせておくのが普通です。


 柿渋紙の秘密

 どうして細かな細工ができるのでしょうか?

 「横紙破り」という諺があります。やりにくい事を無理矢理にでも押し通そうとすることを言います。この諺の通り、和紙は横方向には強いのです。柿渋紙は和紙を縦横縦と張り合わせて作ってあります。だから、どんな方向から切っても弱いところがなく強靱なのです。

 どうして水に濡れても強いのでしょう?

 昔の方なら、傘(ジャノメ傘)に柿渋が塗られていたことを覚えてみえるかもしれません。柿渋を塗った紙水に強いのです。和紙に柿渋を塗ると、柿渋は和紙の繊維の中に染み込みます。柿渋の中のタンニンが固体化すると、あわせて紙自体も固定化されます。天日干しや室枯らしの間に水分が抜けながら固定化されていくので、水による収縮も少なく強い紙となるのです。


 さらに、柿渋紙は虫にも強く、十分に枯れた良い紙は300年位はもつと言われています。(江戸時代の紙が現在も保存されています。)