龍神楊貴妃伝

高野山縁起3(丹生都姫)

●空海は楊貴妃を丹生都姫として高野山に祀った

 空海は、犬飼の放った犬を追いかけ、丹生都姫の霊視と出会います。

 どうすれば、楊貴妃の改葬(かいそう)を行なうことが出来るのか・・・空海は、悩んだ事でしょう。
 なにしろ、楊貴妃は、言わば、皇帝から死刑判決を受けた国際犯罪人です。楊貴妃を表だって祀(まつ)る事は出来ません。

 悩み抜いた空海の頭の中に浮かんだのが、楊貴妃を丹生都姫として祀る事だったのではないでしょうか?
 丹生都姫は、しばしば、中国風の衣装をまとって描かれています。
空海と丹生津姫
紀伊の国名所絵図より「空海、丹生明神の霊視を見るの図」
丹生津姫
金剛峰寺所蔵 弘法大師・丹生高野両明神像(問答講本尊像)から

 伝承では、南山の犬飼は、この丹生都姫の化身であったとされています。

 「高野山縁起2」で紹介した「稲荷大明神流記」の中で、空海が中国で出会った時の稲荷 神の姿は、翁の姿で はなかった事が書かれています。
 その姿は、「稲荷大明神流記」の中には、描写されていませんが、南山の犬飼と稲荷神が同じ人物だとすれば、空海が中国で出会った稲荷神も美しい女神で あったでしょう。

 丹(に)(赤色の材料)は、水銀を含んだ鉱石を材料としている事から、丹生都姫(にうつひめ)・水銀・高野山の関係が一般に言われています。(「参考・ 丹生(にゅう)の研究ー歴史地理学から見た日本の水銀 松田壽男 早稲田大学出版部」)
 私は、丹生都姫と水銀鉱石である丹の関係を否定するわけではありません。丹生都姫自体は、楊貴妃の渡来以前から、この地に祀られていたと考えます。
 
 空海は、これにプラス楊貴妃のイメージを重ねたのでしょう。
 そして、空海は、楊貴妃を、丹生都姫ゆかりの地として高野山に祀ったと想像します。

 最初期に成立したと言われる大師伝である遺告二十五箇条にも、空海と丹生都姫命(ニウツヒメノミコト)との出会いが書かれています。
 そこには、「彼山ノ裏ノ路逼女神名丹 生津姫命(ニウツヒメノミコト)リ テ十許町ノ澤(サワ)(モシ)人到即 時傷害セラル」と書かれています。
 私は、高野山縁起2で 楊貴妃の墓が、狐の墓として忌み嫌われてきた・・・と想像しましたが、この文面から、丹生都姫が、祟りをなす怖ろしい存在だと考えられていた事がわかりま す。(※ちなみに、かつらぎ町天野の丹生津比売神社も、高野山縁起2の中で示した転法輪寺も周りを沢で覆われていたと考えられます。) 

●龍神村には、幾つもの丹生都姫を祀る神社がある

 龍神村の安倍晴明の伝説のある殿原地区には、丹生川が流れており、東224番地の丹生神社・・・丹生川上林の丹生神社等、丹生都姫を祀る神社がありま す。龍 神温泉の近くにある龍神1348番地の皆瀬神社にも、丹生都比売命が合祀されています。明治時代の合祀令の影響を受けて、実態がわかりませんが・・・ここ にも、丹生都姫を祀る神社があったようです。このように、龍神村には、幾つもの丹生都姫を祀る神社がありました。

 おそらく、これは、楊貴妃が丹生都姫として祀られたためではないでしょうか?

●なぜ、高野山は、高野山と名付けられたのか?

 公式の文面では、空海は、嵯峨天皇(さがてんのう)に次の様に高野山を開く事を上奏(じょうそう)しています。
「空海、少年の日、好んで山水を渉覧(しょうらん)せしに、吉野より南に行くこと一日にして、更に西に向かって去ること両日(りょうじつ)程、平原の幽地 (ゆうち)あり。名づけて高野という。」(性霊集(しょうりょうしゅう))
 こうしてみると、高野山という名前を付けたのも空海のようです。

 私には、この「高野」という名前も気になります。

 楊貴妃が仕えた女帝・孝謙天皇(こうけんてんのう)、重祚(ちょうそ)して称徳天皇(しょうとくてんのう)ですが・・・・続日本紀(しょくにほんき)に は、ずっと、高野天皇と記されています。
 孝謙・称徳天皇というのは、生前からの贈り名なのですが、・・・・どうやら、一般的には、高野天皇と呼ばれていたようです。

 空海が、高野山を開山したのは、孝謙・称徳天皇が亡くなられてから、まだ、50年もたっていません。

 もし、昭和山とか大正山、なんて名前の山があったら、貴方は、何を想像しますか?
きっと、その山が、昭和や大正の時代に出来たか・・・あるいは、昭和天皇や大正天皇にゆかりのある山なんだろうなと思うのではないでしょうか?

 そうだとすれば、高野山の名も、楊貴妃の後見者であった孝謙・称徳天皇にちなんで、「高野山」と名付けられたのではないでしょうか?

解明された世界を強震させる真実のミステリー

どうか貴方自身の眼で確かめてみてください!

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